「SPF50」と「SPF30」が並んでいたら、なんとなく「50のほうが安心」に見えるかもしれない。
売り場では、どうしても数字の大小がまず目に入る。
だが、その数字が「何を測った指標なのか」は、パッケージの数字そのものからは読み取れない。
同じ試験条件で比べれば、SPFの数字が高いほど、日焼けによる赤みを防ぐ測定上の性能は高い。
そこは動かない事実だ。
ただし、その数字は「規定量を均一に塗った条件」で測られたスコアにすぎない。
では、実際の塗布量が少なかったり、むらがあったりした場合も、表示どおりの性能が得られると考えてよいのだろうか。
この記事では、SPF・PA・UVA・UVB・塗布量について、公的資料と査読済み研究に沿って整理していく。
特定の商品の比較はしない。あくまで「表示の読み方」と「使用条件」の話に絞る。
① 紫外線の話は「3つの層」に分かれている
日焼け止めの数字を見ても選びきれないのは、知識が足りないからではない。
本来は別々の層にある数字を、一列に並べて比べているからだ。
紫外線対策は、大きく以下の「3つの層」に分けて考えると整理しやすい。
- 環境の強さ:季節、時刻、雲の量、標高、反射など。「その日、その場所にどれだけ紫外線が降っているか」。
- 製品の表示(SPF・PA):決められた試験条件で測った「その製品の性能」。
- 肌の上での実現条件:実際に「どれだけの量を、どれだけむらなく塗ったか」。そして、そのあとに何が起きたか。
私たちがパッケージで見ている表示は、真ん中の「2」でしかない。
「1」の環境が強ければ、同じ表示でも必要な対策は変わる。
「3」の塗り方が崩れれば、試験条件どおりの性能を前提にはできない。
「SPF50を選ぶ」という行為は、この3層のうちの1つを動かしただけにすぎないのだ。
私たちが使用時にすぐ調整できるのは、主に「3」の量とむらだ。 量とむらは今日から変えられる。
「1」の環境自体は変えられないが、予報を見て避け方を変えることはできる。
「2」は購入時に選ぶ。
表示と実使用との間に最も差が出やすいのは、3つ目の「肌の上の条件」である。
塗る量が少なくても、塗り残しがあっても、パッケージの数字は変わらない。
変わるのは、肌の上の条件だ。
この記事も、この順番で進んでいく。環境を見て、表示を読み、最後に肌の上の条件を見る。
② 環境側|UVAとUVBは、何が違うのか
波長と、届く深さ
太陽から届く紫外線は、波長で区分される。
気象庁と環境省の区分では、UVBが280〜315ナノメートル、UVAが315〜400ナノメートルだ(さらに波長の短いUVCは酸素とオゾンに吸収され、地表には届かない)[1–3]。
- UVB:大気で大きく減衰するが、一部が地表へ届く。主に表皮に影響し、時間をおいて出る赤み(サンバーン)とメラニンの増加に関わる。
- UVA:UVBより多く地表へ届く。即時的な黒化や、真皮に及ぶ光老化との関係で語られる。[1, 4, 5]
ただし、「UVAはしわ、UVBは赤み」と完全に分業させるのは行き過ぎだ。
UVBの反復も光老化につながるという指摘もある。
届く深さの傾向が違うのであって、担当が明確に分かれているわけではない。[5]
※波長の境界は資料によって異なるが、本記事では気象庁・環境省の区分を採る。[2, 4]
曇り、窓、反射。紫外線はゼロにならない
紫外線は、晴れた屋外だけのものではない。気象庁の観測は、以下を示している。
- 天気:薄曇りで快晴時の平均8〜9割、曇りで約6割、雨で約3割。雲の状態によっては快晴時を上回る。
- 散乱光:紫外線総量のおよそ6割。空全体から届くため、日陰に入っても頭上が開いていれば紫外線はゼロにならない。
- 反射:上からだけでなく下からも来る。草地やアスファルトは10%以下だが、砂浜は25%、新雪は80%。
- 標高:1000メートル高くなれば、約10%強くなる。[3, 6, 7]
UVAは雲や窓ガラスを通過するが、透過の程度はガラスの種類や加工で変わるため、「すべての窓が同じように通す」とは言えない。[4]
UVインデックスは「環境」の指標
気象庁が発表するUVインデックスは、環境の強さを示す数字であって、製品の性能ではない。
その日の強さを知りたいならUVインデックス、製品が何を測ったのかを知りたいならパッケージの表示。この二つを混ぜて読んではいけない。[2]
③ 表示①|SPFは「時間の倍率」ではない
SPFは「紅斑量の比」である
紅斑とは、紫外線を浴びたあとに皮膚が赤くなる反応のことだ。
SPFは、日焼け止めを塗った部位と塗っていない部位で、かすかな紅斑が出る紫外線量(最小紅斑量)を比較し、割り出した値を基礎とする。[1]
つまりSPFは、主としてUVBによるサンバーンの防止性能を「量の比」で表した数字である。
時間には置き換えられない
ここが最大の分岐点だ。
量の比であって時間の比ではない以上、「SPF30なら、塗らない場合の30倍の時間外にいてよい」とは読み替えられない。
実使用では、紫外線の強さ、浴びる時間、皮膚の感受性、塗布量、むら、汗や摩擦による落ちなど、あらゆる条件が変わるからだ。[8, 9]
また、UVA防止性能の高さ、汗や水への耐久性、摩擦後の保持力など、SPFの数字だけでは判断できない要素も多い。
成分表からは逆算できない
見落とされやすいが、SPFとPAは完成した製品を特定の条件で測った指標だ。
配合されている紫外線防止剤の種類や数から、表示値を推測することはできない。
成分表をどれだけ読み込んでも、表示を見るしか答えはない。
浴びるための許可証ではない
SPFは、屋外にいてよい時間を延ばす券ではない。
環境省は日焼け止めを、避けられない紫外線ばく露に対して防止効果を高めるものとして位置づけている。
浴びる量を増やすための道具ではなく、減らしきれなかった分を受け持つ道具だ。[1]
高い数字を選んだことが、外にいる時間を延ばす理由にはならない。
SPF50と50+の違い
日本化粧品工業連合会(現・日本化粧品工業会)の基準では、測定値の算術平均から小数点以下を切り捨てた整数をSPFとする。
SPFが50以上で、95%信頼限界の下限値が51.0以上なら「SPF50+」。
下限値が51.0に満たない場合は「SPF50」となる。
「SPF50+」は個別の実測値をそのまま示す数字ではなく、国内の表示上限区分である。[10]
肌の中で何がどこにあるのかは、40代肌の構造図の記事で整理している。
④ 表示②|PAの4段階と、SPFと別に読む理由
PAは「UVAPFの4区分」
PAは、UVA防止効果を示す国内の表示だ。
人の皮膚にUVAを当てたときに出る、しばらく残る黒み(持続型即時黒化)を指標に「UVAPF」という値を出し、それを四段階に区切っている。[10, 11]
| UVAPF値 | 表示 |
|---|---|
| 2以上4未満 | PA+ |
| 4以上8未満 | PA++ |
| 8以上16未満 | PA+++ |
| 16以上 | PA++++ |
これはあくまで区分であり、連続した数値ではない。
「+」の数を、そのまま持続時間や遮断率へ換算することはできない。
しわ・たるみ予防のグレードではない
「PA++++」とあると、光老化を防ぐ最高ランクと読みたくなる。
だが試験が見ているのは、あくまで照射後の黒化である。
しわやシミの発生率を長期に追って測ったグレードではない。
「UVA防止性能が国内四段階の最高区分にある」こと以上でも以下でもない。
PAはSPFと同じ尺度にせず、別々に読む指標だ。
なお、表示にはもう一つ、水浴条件でのSPF保持を評価した「UV耐水性(★/★★)」の枠もある。
これは汗に対する強さや、塗り直し不要を意味するものではない。[12, 13]
⑤ 使用条件|2mg/cm²は、指示ではなく試験条件
半量なら効果も半分、にはならない
SPFは「1平方センチメートルあたり2ミリグラム」を均一に塗って測る。
[1]これは表示性能を測るための管理条件である。
日常では、顔や身体の面積、剤形、容器、手に残る量などが変わる。
国内の研究では、実用条件での平均塗布厚は約1ミリグラム毎平方センチメートルだった。
同じ研究で、2回に分けて塗るよう指示すると、ほぼ2ミリグラム毎平方センチメートルまで増えている。
ただし、これは特定の製品と条件で行われた研究であり、すべての剤形や使用者に一般化できるものではない。[14]
量が少なくなれば、表示値を測った条件から離れる。
だが、性能の下がり方を単純な比例では計算できない。
SPF4、15、30、55の4製品を0.5、1.0、1.5、2.0ミリグラム毎平方センチメートルで比較した研究では、塗布量を減らしたときの性能低下は製品間で一様ではなく、高いSPFの製品では、量に比例しない下がり方が確認された。[15]
つまり「半分の量なら表示性能も半分」と単純に計算することはできない。
ただし、これは研究された4製品の結果である。すべての日焼け止めに同じ低下曲線を当てはめることはできない。
目安は「単位」ではなく「道具」
日焼け止めの量は、500円玉大、二本指、パール粒、1円硬貨など、複数の目安で語られる。
このうち国内の公的資料で確認できるのは、環境省のガイドだ。
顔なら、クリーム状はパール粒1個分、液状は1円硬貨1個分を額・鼻・両頬・あごに分けて置き、そのあともう一度、同量を重ねる。
腕や脚は容器から直接、表裏に1本ずつ直線を描くようにつけ、手のひらでらせんを描くように伸ばす。[1]
環境省の資料は、この目安が個々人で2ミリグラム毎平方センチメートルと等価であることを、実測で保証していない。
剤形、密度、粘度、容器の口径、顔や身体の面積で、実際の量は変わるからだ。
今回確認した国内の公的資料では、複数の目安を相互に換算する統一値は確認できなかった。
私自身は、500円玉大を目安にしてきた。
その量で組み立ててきた。
ただし、それは私の運用であって、規格の2ミリグラム毎平方センチメートルと等価だと確認された換算ではない。
目安は、面積を埋めるための道具であって、単位ではない。
規格の塗布量より少ない場合、表示どおりの性能を前提にはできない。
どの目安で面積を埋めるかは、そのあとの話になる。
少量と「むら」は別問題
もう一つ、量と混同されやすいものがある。塗りむらだ。
平均量が足りていても、塗られていない場所では、表示どおりの性能を前提にはできない。
ここは量では埋め合わせられない。
18〜57歳の84名を対象にした研究では、顔とまぶた周辺に塗り残しが生じ、本人がそれに気づいていないことが観察されている。[16]
同じ研究では、SPFを表示した保湿剤を塗った場合、日焼け止めを塗った場合よりも覆えていない部分が大きかったと報告されている。[16]
日焼け止めの代わりに、SPF入りの保湿剤や下地だけで済ませる日がある。
そのとき差が出るのは、量だけではないかもしれない。覆えている範囲のほうも見ておく。
研究で確認されたのは、顔とまぶた周辺の塗り残しである。実際に塗るときは、生え際、耳の周り、あご下なども別に確認する。
量を確認したら、次はむらを確認する。順番に、別々に見る。
なぜ塗り直しが必要なのかは、別記事で整理している。
⑥ まとめ|目安は二つある。時間と、出来事
環境省などは、塗り直しの目安として「2〜3時間おきを目安に、状況を見て」としている。[1, 17]
これは実用のガイドであって、どの製品も2〜3時間で効果がゼロになるという試験結果ではない。
時計で計る「2〜3時間」という目安。
それとは別に、汗をかいた、水に入った、タオルで拭いた、マスクでこすれたといった「出来事」で判断する目安。
両方を持っていることが重要だ。膜を動かす出来事があれば、時間を待たずに補う。
冒頭の問いに戻る
塗布量が少なかったり、むらがあったりした場合も、表示どおりの性能が得られると考えてよいのか。
整理すると、こうなる。
- SPF・PAは、決められた条件で測ったスコアである。
- そのスコアを肌の上でどこまで実現できるかは、塗布量や均一性、汗・摩擦といった使用条件に左右される。
- 数字の高さだけでなく、膜を動かす「出来事」への対応が実効性に関わる。
判断の順番は、そのままこの記事の順番だ。まず環境(UVインデックスなど)を見る。
次に表示(SPFとPA)を別々に読む。
最後に肌の上の条件(量とむら)を確認し、落ちる出来事があれば時間を待たずに補う。
「常に最高値を選ぶべき」でもなく、「日常は低い数値で十分」でもない。
日陰、衣類、帽子、滞在時間の調整など、数字を上げる以外の対策も組み合わせて、自分の場面に当てはめていくのが結局は一番早い。
なお、化粧品の効能として表示できる範囲は、厚生労働省が示している。
日やけ止めに関係する表現には、「日やけを防ぐ」「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」がある。[18]
これは表示できる効能表現の範囲であり、SPF・PAの数値から、しわ・たるみ、皮膚疾患などの長期的な転帰まで読み取れるという意味ではない。
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※この記事は、公的機関・業界団体の公開資料と査読済み研究をもとに、表示の読み方と使用条件を整理したものです。特定の商品や効果を保証するものではありません。必要な対策は、環境や使用状況、肌状態によって異なります。各資料は2026年8月1日に確認しました。
参考文献
[1]環境省.「紫外線環境保健マニュアル2020」.2020年3月改訂.資料を確認する
[2]気象庁.「UVインデックスを求めるには」.資料を確認する
[3]気象庁.「紫外線の性質」.資料を確認する
[4]日本化粧品工業会.「紫外線についての基礎知識」.業界団体資料.資料を確認する
[5]日本化粧品工業会.「紫外線の肌への影響」.業界団体資料.資料を確認する
[6]気象庁.「雲と紫外線」.資料を確認する
[7]気象庁.「地表面の反射と紫外線」.資料を確認する
[8]日本化粧品工業会.「SPF・PA用語」.業界団体資料.資料を確認する
[9]日本化粧品工業会.「化粧品Q&A」.業界団体資料.資料を確認する
[10]日本化粧品工業連合会.「紫外線防止効果測定法基準の改定とそれに伴う『PA++++』表示の追加」.2012年11月14日.業界自主基準資料.資料を確認する
[11]日本化粧品工業会.「UVA防止効果測定法基準について」.2022年.業界自主基準資料.資料を確認する
[12]日本化粧品工業会.「UV耐水性測定法基準」.2021年.業界自主基準資料.資料を確認する
[13]日本化粧品工業会.「UV耐水性の表示に関するQ&A」.業界団体資料.資料を確認する
[14]Teramura T, et al. “Relationship between sun-protection factor and application thickness in high-performance sunscreen: double application of sunscreen is recommended.” 2012. Clinical and Experimental Dermatology. 比較試験・企業所属著者を含む研究.PubMedで確認する
[15]Liu W, et al. “Sunburn protection as a function of sunscreen application thickness differs between high and low SPFs.” 2012. Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine. 比較試験.PubMedで確認する
[16]Lourenco EAJ, Shaw L, Pratt H, Duffy GL, Czanner G, Zheng Y, Hamill KJ, McCormick AG. “Application of SPF moisturisers is inferior to sunscreens in coverage of facial and eyelid regions.” 2019. PLOS ONE. 顔面塗布の比較研究.PubMedで確認する
[17]日本化粧品工業会.「紫外線防止の基本」.業界団体資料.資料を確認する
[18]厚生労働省.「化粧品の効能の範囲の改正について」.2011年7月21日.公的資料.資料を確認する


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