この記事は、研究の紹介と私自身のスキンケア運用の記録です。肝斑の治療や処方薬の使用については、主治医の指示を優先してください。
肝斑の治療を始めてから、私はスマホとパソコンの光も防いできました。
特に気をつけていたのは、治療を始めたばかりのころです。
ブルーライトカットのメガネをかけ、画面には保護シートを貼り、端末の設定も変えました。
日焼け止めを選ぶときも、「ブルーライトカット」をうたっていることが理由の一つでした。
日焼け止めを塗っていない時間にスマホを触っていると、それだけで少し心配になりました。
当時は「画面のブルーライトでも、シミやくすみ、しわなどの肌老化につながる」「肝斑も悪化する」といった情報をよく見かけました。
肝斑を治療していて、トレチノインも使っていた私は、光と名のつくものは全部防ぎたかったのだと思います。
今もレチノールやトレチノインを使っています。
なので、この記事のために調べるまで、画面の光のことはずっと頭の片すみにありました。
ここ数年、その話を前ほど聞かなくなりました。
あれは結局どうなったのか。
いまの研究で調べ直しました。
1.ブルーライトは、太陽光にも含まれている
ブルーライトは、目に見える光(可視光)のうち、波長が短い青い側の光です。
スマホやパソコンだけが出している特別な光ではなく、太陽光にも含まれています。
なので、見るべきなのは「ブルーライトかどうか」ではありません。
どこから、どれだけ浴びるかです。
2026年の色素沈着についての国際コンセンサスでは、テレビ・パソコン・スマホから出るブルーライトの強さは、同じ波長域の太陽光の約100分の1〜1000分の1と整理されています(Passeron ら、2026年)。[1]
2.画面の光で、シミやしわは増えるのか
私が気にしていたのは、肝斑だけではありません。
当時は、ブルーライトが紫外線のように肌へダメージを与え、シミやくすみ、しわ、たるみなどの肌老化につながる、という情報もよく目にしました。
そのため私は、「肝斑が悪化しないか」だけでなく、スマホやパソコンを長時間使うことで、肌そのものが老化しないかも気にしていました。
電子機器のブルーライトについて、研究をまとめたレビューがあります。
88本の文献のうち、条件を満たした9本(細胞の実験6本・生体の研究3本)を評価したものです(Ceresnie ら、2023年)。
色素沈着・赤み・黄み・肝斑の悪化について、電子機器由来のブルーライトは人への有害要因として特定されませんでした。
光老化についても、有害要因には分類されていません。
ただし、研究の数はまだ少なく、今後さらに確かめる必要があることも著者たちは指摘しています。[2]
細胞や、人の皮膚を再現した培養モデルを使った実験では、別の結果もあります。
培養した皮膚にブルーライトを当てると、酸化ストレスに関連する反応や、コラーゲンの分解に関わる酵素(MMP-1)の増加が見られた研究があります(Montero ら、2023年)。
この研究で当てた光の量は、デジタル機器に換算すると約1,700時間分と、著者たちは見積もっています。[3]
ここで分けて考えたいのが、
「肌の細胞に変化を起こし得るか」と、「日常のスマホ使用でシミやしわが増えるか」は、同じ問いではない
ということです。
実験室で一定量の光を当てて変化が起きても、日常生活で画面から受ける光の量で、同じことが起こるとは限りません。
実際の画面から出る光を測った研究もあります。
スマホ・タブレット・パソコンの6つの画面で、明るさ・距離・ナイトモードを変えて光の量を測った研究です(Charoenpipatsin ら、2025年)。
日常の使い方で浴びる量は小さく、皮膚に害を与える可能性は低いという結論でした。[4]
私が特に気にしていた肝斑については、人で確かめた研究もあります。
肝斑のある12人を対象にした研究です(Duteil ら、2020年)。
研究者はまず、スマホやパソコンから出る420〜490nmの光の強さを測りました。
そのうえで、最も強い画面から8時間浴びた場合に相当する量のブルーライトを、専用の光源で顔の片側に当てました。
これを5日間続け、反対側の顔と比べたところ、肝斑の悪化は確認されませんでした。[5]
12人・5日間という小規模で短い研究なので、何年も使い続けた場合の影響まで否定できるものではありません。
いま言えるのはここまでです。
スマホやパソコンをふだん使う程度のブルーライトが、紫外線と同じようにシミや肝斑、光老化を引き起こすという臨床的な根拠は、現時点では確認されていません。[1][2][4][5]
3.気にするなら、太陽光の可視光
これで「光はもう気にしなくていい」とはなりません。
2026年には、可視光による光防御についても国際的な専門家のコンセンサスが出ました(Lim ら、2026年)。
そこでは、可視光が炎症後色素沈着に関わり、肝斑にも関与する、と整理されています。
同じコンセンサスでは、肌への臨床的な影響が確認されているのは太陽の可視光のほうで、スマホなどの電子機器の光には臨床的な影響を示す証拠はない、という項目に、専門家35人中33人が合意しています。[6]
しわやたるみについても、分けて見ておきます。
可視光は、細胞や培養皮膚では、酸化ストレスや光老化に関係する変化を起こすことが確認されています。
一方、同じコンセンサスでは、可視光が人で光老化を引き起こすという臨床的な証拠は、現時点ではないと整理されています。[6]
美容面で、いま可視光対策を考える根拠がはっきりしているのは、主に色素沈着です。
画面の光は量が小さい。太陽光の可視光は無視できない。
同じ「ブルーライト」という言葉でも、画面と太陽は分けて考えるほうがよさそうです。
太陽光の可視光への対策として研究されているのが、酸化鉄などの色の粉を含む色付きの日焼け止めです。
肝斑のある女性42人が、南フランスの夏の5か月間、色付きか色なしの日焼け止めを使った試験があります(Polena ら、2025年)。
紫外線を防ぐ力はどちらも同程度です。
- 夏のあいだ、どちらの群も肌の色は安定していて、日光で色が濃くなるのは抑えられていた
- 肝斑部分と周りの肌の色の差は、色付きの群でだけはっきり縮まった
- 医師がつける重症度スコアは、どちらも下がり、群のあいだに差はなかった
小規模で1施設・夏だけの試験です。
化粧品会社(NAOS社)が資金を出し、著者にも同社の研究者が含まれています。[7]
全員に必須というより、肝斑や色素沈着を管理している人が知っておきたい選択肢です。
4.調べ直して、私が変えること
シミやしわを防ぎたいと思うほど、「紫外線だけでなくブルーライトも防がなければ」と考えたくなります。
私もそうでした。
レチノールやトレチノインを使っているときは、なおさらです。
レチノイドは肌が日光に敏感になることがあるため、夜に使い、日中は日光対策をするよう、米国皮膚科学会も案内しています。[8]
日光対策は、今も続けています。
でもこれからは、「光を気にする」ことと「すべての光を同じように怖がる」ことは分けます。
肌を守る目的では、ブルーライトカットのメガネ・シート・設定をそろえることは、もうしません。
そのぶんの手間を、こちらに回します。
- 日中の紫外線対策を、塗る量と塗り直しまで含めて丁寧にする
- 肝斑や色素沈着が気になる時期は、必要に応じて色付きの日焼け止めも選択肢にする
- レチノールやトレチノインは使い方を守り、刺激が出ている肌を無理に攻めない
- 肌をこすらない
スマホを触りながら心配していた時間は、太陽のほうに向けてよかったのだと思います。
ブルーライト対策という言葉が消えたのではなく、研究が進んでどこから、どれだけの光を浴びるのかで分けて考えられるようになってきた。
調べ直して、私はそう受け取りました。
スマホの画面を怖がるより、太陽光を丁寧に防ぐ。
参考文献・資料
[1]Passeron T, et al. “Global consensus on the management of melanin hyperpigmentation disorders.” Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology. 2026;40(5):760–772. 国際コンセンサス.doi:10.1111/jdv.70185.出版社で確認する
[2]Ceresnie MS, Patel J, Lim HW, Kohli I. “The cutaneous effects of blue light from electronic devices: a systematic review with health hazard identification.” Photochemical & Photobiological Sciences. 2023;22(2):457–464. 系統的レビュー.doi:10.1007/s43630-022-00318-9.PubMedで確認する
[3]Montero P, Roger I, Milara J, Cortijo J. “Damaging effects of UVA, blue light, and infrared radiation: in vitro assessment on a reconstructed full-thickness human skin.” Frontiers in Medicine. 2023;10:1267409. 培養皮膚モデルを用いた基礎研究.doi:10.3389/fmed.2023.1267409.原著を確認する
[4]Charoenpipatsin N, et al. “Dosimetry Assessment of Potential Hazard from Visible Light, Especially Blue Light, Emitted by Screen of Devices in Daily Use.” Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology. 2025;18:169–176. 電子機器画面の光量測定研究.doi:10.2147/CCID.S490977.原著を確認する
[5]Duteil L, Queille-Roussel C, Lacour JP, Montaudié H, Passeron T. “Short-term exposure to blue light emitted by electronic devices does not worsen melasma.” Journal of the American Academy of Dermatology. 2020;83(3):913–914. 小規模ヒト試験.doi:10.1016/j.jaad.2019.12.047.PubMedで確認する
[6]Lim HW, Schalka S, Trautinger F, et al. “International modified Delphi consensus statement on visible light photoprotection: Effects, measurement, and recommendations.” Journal of Investigative Dermatology. 2026;146(8):2094–2104.e2. 国際修正Delphiコンセンサス.doi:10.1016/j.jid.2026.03.012.PubMedで確認する
[7]Polena H, Queille-Roussel C, Graizeau C, Duteil L, Sayag M, Passeron T. “Comparison of Visible Light-Protective Tinted Sunscreen to Untinted Sunscreen to Protect Melasma Patients During Summer: A Prospective Randomized Investigator-Blinded Study.” Journal of Cosmetic Dermatology. 2025;24(10):e70450. 前向き無作為化・評価者盲検試験。NAOS社による資金提供および同社所属著者を含む.doi:10.1111/jocd.70450.PubMedで確認する
[8]American Academy of Dermatology Association. “Retinoid or retinol?” Updated May 25, 2021. 公的な患者向け情報.AADで確認する
各資料は2026年9月30日に確認しました。


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